Ⅰ いじめの防止のための対策に関する基本的な考え方
1 いじめの問題に対する基本的な考え方
いじめは、いじめを受けた生徒の教育を受ける権利を著しく侵害し、その心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、不登校や自殺などを引き起こす背景ともなる深刻な問題である。また、最近のインターネットを介した、いわゆる「ネット上のいじめ」は、いじめを一層複雑化、潜在化させている。
いじめの問題は、学校が一丸となって組織的に取り組むことを第一義とし、家庭、地域、及び関係機関等の協力を得ながら、社会総がかりで対峙することが必要である。また、いじめのっ問題の解決には、生徒にいじめを絶対に許さないという意識と態度を育てることが必要である。
本校は教育目標に掲げる「未来を切り拓く完成と創造性豊かな人間を育てる」を実践し、いじめを生まない環境を築くとともに、全ての生徒が生き生きとした学校生活を送ることができるよう教育活動を推進する。そのために、校長のリーダーシップのもと、全教職員がいじめの問題に対する感性を高め、組織的にいじめの未然防止、早期発見・早期対応に取り組む。
2 いじめの定義
「いじめ」とは「当該生徒が、一定の人的関係のあるものから、心理的又は物理的な攻撃(インターネットを通じて行われるものを含む。)を受けたことにより心身の苦痛を感じているもの。」とする。なお、起こった場所は学校の内外を問わない。(文部科学省平成19年1月)
3 いじめの基本認識
- (1)いじめは人権侵害であり、いかなる理由があっても許される行為ではない。
- (2)いじめは人間関係のトラブルを機序としているため、いじめられた側及びいじめた側の両方の生徒、並びにそれを取り巻く集団等に対し、適切な指導と支援が必要である。
- (3)いじめは教師の生徒観や指導の在り方が問われる問題である。
- (4)いじめは家庭教育の在り方に大きなかかわりをもっている。
- (5)いじめは学校、家庭、地域社会などすべての関係者がそれぞれの役割を果たし、一体となって取り組むべき問題である。
- (6)いじめはその行為の態様により暴行、恐喝、強要等の刑罰法規に抵触することがある。
Ⅱ いじめの未然防止のための取組
1 教職員による指導について
- (1)学級や学年、学校が生徒の心の居場所となるよう配慮し、安心・安全な学校生活を保障するとともに、生徒が互いのことを認め合ったり、心のつながりを感じたりする「絆づくり」に取り組む。
- (2)自己有用感や自尊感情をはぐくむため、生徒一人ひとりが活躍し、認められる場のある教育活動を推進する。
- (3)すべての教師がわかりやすい授業を心掛け、基礎基本の定着を図るとともに、学習に対する達成感・成就感をもたせる。
- (4)生徒の豊かな情操と道徳心を培い、心の通う対人関係能力(の素地)を養うため、全ての教育活動を通じて、道徳教育及び体験活動等の充実を図る。
- (5)いじめ防止の重要性に関する理解を深めるための啓発その他必要な処置として、道徳、学級活動等の充実に努める。
- (6)保護者、地域住民及びその他の関係者との連携を図りつつ、いじめ防止に資する生徒が自主的に行う生徒会活動に対する支援を行う。
2 生徒に培う力とその取組
- (1)自分も他人も共にかけがえのない命を与えられ、生きていることを理解し、他者に対して温かい態度で接することができる思いやりの心をはぐくむ。
- (2)学級活動や生徒会活動などの場を活用して、生徒自身がいじめの問題の解決に向けてどう関わったらよいかを考え、主体的に取り組もうとする力を育む。
- (3)学級の諸問題について話し合って解決する活動を通し、望ましい人間関係や社会参画の態度を育てるとともに、違いや多様性を越えて合意形成をする言語能力の育成を図る。
3 いじめの防止の対策のための組織
本校は、いじめの防止を実効的に行うため、次の機能を担う「いじめ対策委員会」を設置する。
- (1)構成員
校長、副校長、生徒指導主事、各学年主任、養護教諭、スクールカウンセラー、(関係機関(遠野警察署))
- (2)取り組み内容
- ①いじめ防止基本方針の策定
- ②いじめにかかわる研修会の企画立案
- ③未然防止、早期発見の取組
- ④アンケート及び教育相談の実施と結果報告(各学級・学年の状況報告等)
- (3)開催時期
いじめ事案の発生時に開催し、事態の収束まで随時開催とする。
4 生徒の主体的な取組
- (1)生徒会によるいじめ防止標語・ポスターの作成
- (2)好ましい人間関係づくりをねらいとした生徒会行事や取組
- (3)人権啓発・いじめ撲滅等各種イベントへの参加
5 家庭と地域との連携
- (1)学校いじめ防止基本方針を、ホームページにして広報活動に努める。
- (2)PTAの各種会議で、いじめの実態や指導方針について説明を行う。
- (3)いじめ防止の取組について、学級通信や学年通信を通じて保護者に協力を呼びかける。
- (4)学級懇談会で生徒の様子や実態を伝える。
6 教職員研修
- (1)いじめ防止に向けた校内研修(兼いじめアンケートの結果報告)を年4回以上実施する
- (2)職員会議等でいじめの防止のための対策に関する資料を配布する。
- (3)いじめ防止研修会に参加した職員より伝達講習を行う。
Ⅲ いじめの早期発見のための取組
1 いじめの早期発見のために
- (1)いじめや人間関係のトラブルで悩む生徒が相談しやすいよう、日頃から教職員と生徒が信頼関係を築くように心がける。
- (2)日常の観察については、いじめ行為の発見だけでなく、生徒の表情や行動の変化にも配慮する。
- (3)いじめは大人の見えないところで行われるため、授業中はもとより、部活動や放課後においても生徒の様子に目を配るよう努める。
- (4)遊びやふざけあいのように見えるいじめ、部活動の練習のふりをして行われるいじめなど、把握しにくいいじめについても、教職員間で情報交換をしながら発見に努める。
- (5)いじめの兆候に気づいたときは、教職員が、速やかに予防的介入を行う。
- (6)地域や関係機関と定期的な情報交換を行い、日常的な連携を深める。
- (7)学校として特に配慮が必要な生徒については日常的に当該生徒の特性を踏まえた適切な支援を行うとともに、保護者との連携、周囲の児童に対する必要な指導を組織的に行う。
- *特に配慮が必要な生徒とは、発達障害を含む障がいのある生徒、外国から帰国した生徒、国際結婚の保護者を持つ生徒、性同一性障害や性的指向・性自認に係る生徒、東日本大震災により被災した生徒、原子力発電所事故により避難している生徒等を含む
2 いじめアンケート及び教育相談アンケートの実施
いじめを早期に発見するため、生徒からの情報収集を定期的に行う。
- (1)生徒を対象としたアンケート調査 年4回(6月、9月、11月、2月(年生を除く))
- (2)保護者を対象としたアンケート調査 年1回(7月)
- (3)教育相談を通じた生徒のアンケート調査 年1回(5月)*1年生対象
- *アンケートは実施から5年間保存する。
3 相談窓口の紹介
-
いじめられている生徒が、教職員や保護者に相談することは、非常に勇気がいる行為である。いじめを大人に打ちあけることによって、場合によっては、いじめがエスカレートする可能性があることを十分に認識し、その対応について細心の注意を払うこととする。
いじめの兆候を発見したときは、関係する教職員で迅速に情報を共有し、適切な対応を行う。
本校におけるいじめの相談窓口を下記のとおりとする。
日常のいじめ相談 |
全教職員が対応 |
スクールカウンセラーの活用 |
養護教諭・教育相談コーディネーター |
地域からのいじめ相談窓口 |
副校長 |
インターネットを通じて行われるいじめ相談 |
学校または遠野警察署 |
※24時間いじめ相談電話(県教委) |
019-623-7830(24時間対応) |
Ⅳ いじめの問題に対する早期対応
1 いじめに対する措置の基本的な考え方
- (1)いじめを発見したり、通報を受けたりしたときは、特定の教職員が抱え込むことなく、速やか「いじめ対策委員会」に報告し組織的な対応をする。
- (2)いじめられている生徒及びいじめを知らせた生徒の身の安全を最優先に考えるとともに、いじめている側の生徒には、教育的配慮の下、毅然とした態度で指導にあたる
- (3)いじめの問題の解決にあたっては、謝罪や責任を問うことに主眼を置くのではなく、社会性の向上等、生徒の人格の成長に主眼を置いた指導を行うことを大切にする。
- (4)教職員全員の共通理解のもと、保護者の協力を得て、関係機関・専門機関と連携し、対応にあたる。
2 いじめの発見・通報を受けたときの対応
- (1)いじめを発見したときは、その場でいじめの行為を止めさせ、当該学年及び生徒指導課が連携して事実関係を明らかにする。
- (2)いじめを発見したり、通報を受けたりした職員は、速やかに「いじめ対策委員会」に報告する。校長はいじめ対策委員会を開催し、校長以下すべての教員の共通理解のもと、役割分担をして問題の解決にあたる。
- (3)「いじめ対策委員会」はいじめの事案について、生徒指導の範疇で対応する事案であるか、警察への通報を要する事案であるかを適切に判断する。
- (4)いじめられている生徒や保護者の立場に立ち、関係者からの情報収集を綿密に行い、事実確認をする。
- (5)いじめの事実が確認された場合は、いじめをやめさせ、その再発を防止するため、いじめを受けた生徒及びその保護者に対する支援と、いじめを行った生徒への指導とその保護者への助言を継続的に行う。
- (6)いじめを受けた生徒が学校生活に不安を抱えている場合、複数の教職員で見守りを行うなど、いじめられた生徒の安全を確保する。また、いじめられた生徒が安心して教育を受けるために必要があると認められるときは、保護者と連携を取りながら、一定期間、別室等において学習を行わせる措置を講ずる。
- (7)いじめを受けた生徒の心を癒すために、また、いじめを行った生徒が適切な指導を受け、学校生活に適応していくために、スクールカウンセラーや養護教諭と連携を図りながら、指導を行う。
- (8)教育上必要があると認めるときは、適切に生徒に懲戒を加える。
- (9)いじめの解消の確認は、少なくとも次の2つの要件が満たされていることをもって確認する。
①いじめに係る行為が少なくとも3か月以上、止んでいること。
②被害生徒が心身の苦痛を感じていないこと。この場合、被害生徒及びその保護者に対し、面談等により確認する。
3 いじめが起きた集団への対応
- (1)いじめを見ていた生徒に対して、自分の問題として捉えさせる。
- (2)学級等当該集団で話合いを行うなどして、いじめは絶対に許されない行為であり、当該集団から根絶しようという態度を行き渡らせる。
- (3)全て生徒が、集団の一員として、互いを尊重し、認め合う人間関係を構築できるような集団づくりをすすめるよう、教職員全体で支援する。
4 警察との連携
犯罪行為として取り扱われるべきいじめについては、岩手県教育委員会及び遠野警察署と連携して対処する。
5 ネットいじめへの対応
- (1)インターネット等を通じて行われるいじめを発見したり、通報を受けたりした場合は、「いじめ対策委員会」で情報を共有するとともに、被害の拡大を避けるため、岩手県教育委員会と連携し、適切に対処する。
- (2)生徒の生命、身体または財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは、直ちに遠野警察署に通報し、適切な援助を求める。
- (3)インターネットの利用はパソコン、携帯電話やスマートフォン等を介して行われることが大部分であることから、その利用についてのルールづくりを、各家庭に協力を要請する。
Ⅴ 重大事態への対処
1 重大事態とは
- (1)いじめにより本校に在籍する生徒の生命、心身または財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき
- (2)いじめにより本校に在籍する生徒が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき
2 重大事態の報告
- (1)学校は、重大事態が発生した場合、速やかに岩手県教育委員会に報告する。
- (2)生徒からいじめられて重大事態に至ったという申立てがあったときは、重大事態が発生したものとして対処する。
3 重大事態の調査
学校が調査の主体となる場合
岩手県教育委員会の指導・支援のもと、以下のとおり対応する。
- (1)重大事態に係る事実関係を明確にするための調査については、本校の「いじめ対策委員会」が中心となり、全職員体制で速やかに行う。
- (2)調査の際には、重大事態の性質に応じて、適切な専門家を加えるとともに、いじめ事案の関係者と直接の人間関係または特別の利害関係を有しない第三者の参加を図り、調査の公平性・中立性を確保する。
- (3)調査においては、いじめの事実関係を可能な限り網羅し、明確にする。特に、客観的な事実関係を速やかに調査する。
- (4)調査結果を岩手県教育委員会に報告する。
- (5)いじめを受けた生徒及びその保護者に対し、調査によって明らかとなった事実関係について、経過報告を含め、適時・適切な方法により情報提供する。
- (6)いじめを受けた生徒及びその保護者の意向を配慮したうえで、保護者説明会等により、適時・適切にすべての保護者に説明するとともに、解決に向けて協力を依頼する。
- (7)「いじめ対策委員会」で再発防止策をまとめ、学校をあげて取り組む。
学校の設置者(岩手県教育委員会)が調査の主体となる場合
設置者の指示のもと、資料の提出など、調査に協力する。
Ⅵ 学校評価
いじめの把握及びいじめに対する措置を適切に行うため、次の点を学校評価の項目に加え、自校の取組を評価する。
○いじめの未然防止にかかわる取組に関すること
○いじめの早期発見にかかわる取組に関すること
Ⅶ その他
1 校務の効率化
教職員が生徒と向き合い、いじめの防止等に適切に取り組んでいくことができるようにするため、公務分掌を適正化し、組織体制を整えるなど、校務の効率化を図る。
2 地域や家庭との連携について
いじめ防止等にかかわる方針及び取組について、保護者及び地域に公開し、理解と協力を得る。また、より多くの大人が生徒の悩みや相談を受け止めることができるようにするため、学校を家庭、地域が組織的に連携・協働する体制を構築する。