スーパーグローバルハイスクール

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3月20日(月)
 本日は午前中MITでプレゼンテーションと講義を受けるため、いつもより早く7:30に寮内のエントランス集合。体調不良者はなし。

 カフェテリアで朝食を摂り、8:15シャトルバスに乗る。

 チェスナット・ヒル駅から地下鉄グリーンラインDに乗り、パーク・ストリート駅へ。その後レッドラインに乗り換え、チャールズ川を渡りケンダル駅へ。

 駅前の広場の石畳には、アメリカの偉大なる発明家エディソンやビル・ゲイツ、スティーヴ・ジョブスを讃えるレリーフが所々に嵌め込まれている。

 本日の最初の目的地、MITメディア・ラボに向かう道中、蝦名氏からMIT構内の各種施設の説明を受ける。

 これまで歴史的建造物を見慣れてきた我々の目には、未来的にデザインされた鉄筋コンクリートの建物群が非常に新鮮に映る。生成文法で有名なチョムスキーが教鞭をとった人文科学棟に入ってみると、知的なシャレが効いたオブジェや看板が目につく。

 ガラス張りのモダンな建物、メディア・ラボの一階ロビーで、本日の講師アイラ・ワインダー氏を待つ。知的で柔和なワインダー氏に、施設内を案内していただき、会議室へ移動。

 最初にGが “Realizing a Sustainable Agriculture in Tsunami Affected Areas” と題して、東日本大震災で被災した経験を踏まえ、生まれ故郷の大槌町の復興計画に、持続可能な社会の構築という観点から、農業を中心に据えたカウンター・プランを提案。

 ワインダー氏は過去に日本に滞在した経験があり、現在も南三陸町の復興計画に携わっている。Gの発表に対して、まるで自分のことのように真摯に耳を傾けてくれた。ワインダー氏は、Gの提案は被災地の復興にとって非常に重要な意味を持つことを強調した。そして今後、計画をより現実的・実践的にしていくのに必要となる支援を、人脈を駆使して他の多くの専門家を紹介するという形で約束してくれた。

 震災で被った傷は大きいけれども、世界中の人々が「あの日」を我がこととして捉え、復興に向けて協働していることを、ワインダー氏を通じて再確認することができた。

 次にUが、学術都市としての盛岡市の発展について、二度目のプレゼンテーションを行なった。Uは前回グレイマン女史からいただいた助言を元に、多少内容を深めていた。生徒達の学習能力と向上心の高さに、驚きを隠せない。

 ワインダー氏は学部、大学院ともMIT出身で、大学構内にある研究室まで徒歩数分という立地の寮で学生時代を過ごした。

 Uの発表の中の「学問に適した環境に必要なのは、静けさと低い生活コストである」という点に興味を抱いたようで、「非常に面白い。閑静さは盛岡のような小さな地方都市だけでなく、東京のような大都会でも、寮の設置によって実現可能であり、君の発表は汎用性が高い」との賞賛をもらった。

 Uがスマート・シティ実現に必要な公共交通機関について、先進的な例はないかと尋ねると、これにも「大学構内に寮があれば、通学に時間を割く必要がなくなる。東京では通学や通勤に1時間も2時間もかけるだろう?」との回答。物事を逆転的に発想する、ワインダー氏の知性の一端が偲ばれる発言。

 Uはまた、様々な専門分野の人々が自由に座を共有する場である「ホール」が、アメリカではどのように活用されているのか質問。学際領域から次々に新しい学問を開拓し、世界の先頭を走り続けるMITでは、ホールを私的空間(ここではそれぞれが専門とする学問分野の内側に属するという意味)と公的空間(大学関係者以外も使用できる、一般に解放された空間)を繋ぐもう一つの階層(第三の場)として捉えているとのこと。様々な専門分野の人々が、一つの問題やプロジェクトに関して自由闊達に議論できる場がホールであり、世界の知が集積するMITにおいて、そのホールでの議論が自身の先進性を担保する一つの要因であると理解できた。

 その後、ワインダー氏が取り組む研究や携わっているプロジェクトに関して短い講義を受ける。

 ワインダー氏はレゴ・ブロックとビッグデータを活用し、データベースを卓上の基盤に光で反映させて、レゴ・ブロックを移動させることで様々なシミュレーションができる装置を開発している。

 例えば、サンフランシスコの地図を基盤に映し出し、そこに赤と青の光で人口密集地を示す。商店のブロックを基盤の任意の場所に置くと、当該地域の潜在的な顧客が緑と黄色の光で地図上に反映される。新規開店の際など、どこに出店すれば最も利益率が高くなるか、商店のブロックの配置を変えることでシミュレーションできるのだ。

 生徒達は実際にその装置に触れ、地図上の光が変化する様に感動。

 学問の楽しさに触れられる貴重な時間であった。

 12:15ワインダー氏に別れを告げ、MITのカフェテリアへ移動。

 学生達に混じって昼食を摂る。ボストンの物価は高く、これまで外食すれば 10ドルに羽が生えて飛んでいく経験ばかりしてきたが、ここではすごいボリュームの料理でお釣りがくる。

 その後、近くの有名なアイスクリーム店に行き、皆でアイスを楽しむ。来た時とは別のルートでケンダル駅前に戻り、MITの生協でお土産を購入。

 15:00ケンダル駅からレッドラインでパーク・ストリート駅へ戻り、グリーンラインに乗り換え、ボイルストン駅で下車。

 関根勤の娘、麻里さんがOGであることで有名なエマソン・カレッジを訪問。ジャーナリズム界、舞台界、メディア界に優秀な人材を数多く輩出する同大学の現役学生に、キャンパス・ツアーを案内してもらった。

 市街地の真ん中に位置する大学のため、複数の高層ビルをキャンパスとしている。歴史を感じさせる外観とは裏腹に、内部は実践的な授業を行うための設備が整った、現代的な作り。エマソン・カレッジは独自にテレビのチャンネルを有しており、その番組制作を支えるスタジオや、有名人や政治家を呼んでインタビューを行うための部屋など、プロフェッショナルが使用するような施設が充実している。

 舞台芸術の教育にも定評がある同大学は、自らが五つの劇場を擁する。最後はその内の一つに案内していただいた。絢爛な装飾を施された伝統的な劇場が、現役で稼働しており、その舞台で学ぶことができる学生達を羨ましく思う。

 16:30にボイルストン駅からグリーンラインDに乗り、チェスナット・ヒルに向かう。

 17:00帰寮。

 夕食後、今晩は20:00から寮のラウンジでアイスクリーム・ナイト。

 ベネズエラの陽気な若者達と一緒にアイスを味わい、男子はモノポリーに興じる。女子は今後の発表に備えて、プレゼンテーションの練習。

 それぞれ充実した夜を過ごした。

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