同窓会60周年記念事業
平成21年11月10日(火) 13:30〜16:00
花泉高等学校 第一体育館
バイマーヤンジンさんの講演
演題「日本の失われた家族の絆」
家族を思い、親を思い、子どもを思う心を、日本人は機能的で合理的な便利な生活
の中で見失ってはいないか。電気や水道設備の不備なチベットに住む人たちが、今な
お持ち続けている心に触れて、私たち日本人の心に響く内容であった。
現在、ヤンジンさんは、日本人に嫁いで大阪に住んでいる。
両親は、中国チベット自治区の遊牧の民であり、学校に通う機会がなかった。そのため、公文書の文字が分からずに財産権などで不平等を強いられたという。このことから両親は、子どもに同じ思いをさせないため、大切な家畜を売り学校を続けさせてくれた。また、長兄も遊牧をしながらヤンジンさんを支えたそうである。裕福な家庭ではなかったので、高校の学生寮では、消灯後のわずかに灯るトイレの薄暗い灯りで本を読み勉強したという。そして、高校時代の恩師に、すばらしい歌声を見いだされ、大学への進学を勧められた。将来、声楽家をめざし中国四川省の音楽大学に入学することができた。大学でもただ一人のチベット人学生として民族差別を受け、嫌がらせを受けたという。また、演奏家活動が出来ない時期があり、辛い生活をしたこともあった。だからステージに上がる前には、心を込めて丁寧にお辞儀をする。これはステージに立てることに、感謝の思いを持っているからであるという。現在、自分を育ってくれたチベットの子ども達に教育を受けさせてやりたいという思いから講演活動で得た資金で、小学校を建設をしている。これまで7年間で、チベットに10校の小学校を建設している。
講演の最後に、ふるさとチベットの民謡を歌っていただいたが、広大な草原を思わせる朗々とした歌声に、凛とした誇りを感じさせるものがあった。そして、日本の唱歌「ふるさと」、「うさぎ追いし彼の山、こぶな釣りし彼の川、夢は今も巡りて、忘れがたきふるさと・・・・」を歌った。目に涙を浮かべながら、ふるさとチベットへの思いを込めて歌った姿が、強く印象に残った。
講演後の懇談会。日本人は教育が受けられることの感謝の念が希薄であるという。高校生は、親に感謝し、しっかり勉強をしなさいと激励していた。
チベットでは人とのつながりがなければ暮らせない。便利な日本では一人でも暮らせると思い込んでいないかと感謝の心を訴える