戯曲部門で畠山が最優秀賞を受賞しました。短歌部門で入選しました。

短歌部門: 
<入選> 佐藤
青空に 両手を広げて 聞いてみる 目指した先に 何が待っているのかと
正直な 気持ちはなぜか 伝わらず いつも閉ざしとく 本当の自分
鳴き声が 季節の流れ 知らせるよ これから始まる 私のアルバム

<入選> 千葉
ケータイの ムービーよりは 肉眼で 残しておきたい 夏の思い出
三十九度の 暑さと 眠気に耐えながら 時計を確認 あと五分よい
口ずさむ 流行の曲を 風に乗せ 僕らの思い 響けこの夏

戯曲部門: 最優秀賞 Alice〜in the Story Without the END〜  畠山
<作品評>
 大変によく練られた作品です。登場人物や場の設定、ストーリー展開も巧みです。
 「不思議の国のアリス」を素材としてうまく利用しながら、作者自身の創り上げた全く別世界である「箱庭の庭」の世界が広がっていきます。自殺しようとした主人公のアリス(日向)の姿を借りて、苦しくとも生を全うすることの意義を問いかけています。
 死者の世界である「箱庭の庭」に自殺者を留めておく役割のチェシャ猫、生者の世界に戻す役割の兎。恋人を待ち続ける紅い宝石、紅い宝石が諦めるのを待っている黒い宝石。黒い宝石の趣味は、人間の弱い心を集めて宝石にすること。自分の寂しさのために、忘却のお茶で他社を縛ろうとする帽子屋。帽子屋に捕まっている招かれざる客人。全ての登場人物がつながりをもち、それぞれ役割と意味を与えられています。
 自殺した人間たち(アリスたち)の行きつく所ではどんな生き方しかできないのかが「真理の森」で明らかにされます。台詞で伝えたいことを説明せずに伝られていることやラストまで明かされず、興味をもって観ることができるであろう展開になっていることに、作者の優れた技量とセンスが感じられます。ラストでは、自分いるべき生者の世界へとアリス(日向)は戻っていきます。生きていれば悩むことができることや自分の選択によって少しでも自分を変えられることができることを知って。
 惜しかったのは「紙(通行許可証)」にもっと意義をもたせてほしかったことです。「こんな紙切れ」は本当は「大事なもの」のはずです。小道具としての「紙切れ」が、アリス(日向)にとっても重要なものになるような伏線がほしいと感じました。兎を生者と死者の世界をつなぐものとして設定しているので、「紙切れ」も同じように生者と死者の世界をつなぐものとして設定できると、もっと話しに深みがでてくると感じました。
 全体として一本筋の通った戯曲に仕上がっています。ぜひ舞台で観てみたいと思わせる完成度がありました。
(審査員評)