スーパーグローバルハイスクール

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3月22日(水)
 7:30に寮内のエントランス集合。体調不良者はなし。
 本日は外交学の世界的権威、ハーヴァード・ケネディ・スクールにキャスリン・クルーヴァー女史のもとを訪れる。8:15に出発し、昨日と同じ行程でハーヴァード大学へ向かった。
 10:00に女史に迎えられ、ケネディ・スクールのえんじを基調とした美しい会議室に通される。
 最初にSとMが、 "Promoting Social Advancement of Women in Our Home, Iwate" と題して、鳥取県と岩手県の女性の社会進出の現状と支援体制の比較を行い、岩手県内の企業にフィールド・ワークを実施して得た知見をもとにして、今後の日本における女性の社会進出の方向性を探る研究を発表した。
 女史は二人の現状分析における定量的調査が充実していると評価。今後研究を進めるにあたっては、現実的効果的な選択肢を女性に与えることが、解決策の質的側面を補強すると助言をくれた。
 また、エヴィデンスにおける女性の雇用に関する数字に、パート・タイムかフル・タイムかの区別を追加することで、キャリア志向の女性を支援する上で鍵となるような問題を顕在化できるとのこと。
 加えて、日本とよく似た国(例えば、国民性は保守的で、少子高齢化社会が進展する先進国ドイツ)と現状や政策を比較検討することで、有益な発想が生まれることなど、切れ味鋭い助言を数多くもらった。
 次にYが、前回ブルックライン高校で得た知見をもとに内容を改善した、発展途上国への教育支援の在り方について発表。
 発展途上国の貧困の問題は、本来複数の要因が混ざり合って起きている。Yは今回非識字率に着目し、教育による支援の重要性について語ったが、先行事例の比較検討から始めて、その改善策を模索する形をとった方が、説得力をもった研究になるとの助言をくれた。Y自身、暗中模索しながら今回の研究を進めてきたため、女史の的確な指摘が、今後進むべき方向を照らしてくれた。女史は、17歳という若さでこうしたグローバル課題を自分の問題として真剣に取り組むYの姿勢を評価、今後に期待するとの励ましの言葉をもらった。
 最後に千條が、未だ将来のキャリア・プランに明確なヴィジョンを抱くことができていない一年生女子の参考になるよう、女史に自身の半生を語ってくれないかとお願いした。女史はアメリカ人の父とドイツ人の母親を持ち、ドイツのインターナショナル・スクールで学んだ。アメリカの名門女子大学群、セヴン・シスターズの一つ、ブラウン大学で学位を取得後、CNNの報道記者として活躍。その後報道ディレクターとなり、後に中国企業に請われコンサルタントを務める。それまでの濃密な経験で得られた知見を自分なりに整理しようと、ケネディ・スクールの門をたたき、修士号を取得。その後同大学院にとどまり、現在は世界各国から自国の問題を解決しようと高い志を持って集まる若者達を、教え導く仕事をしている。彼らは皆ミッションを背負って、ここに集まっている。帰国後は指導的立場として、それぞれの故郷に良い変化をもたらすために、ここで日々議論を重ねているのだ。そう語る女史の顔に、今の仕事に誇りを持って臨んでいる充実感と、飽くなき向上心が覗かれる。女史は人生の局面ごとに、リスクを負いながら目の前の壁を一つひとつ乗り越えてきたと語ったが、それが知らずと色鮮やかなキャリアを形成していたのだと知り、大いに刺激を受けた。
 その後、昼食をハーヴァード・ロー・スクール内のカフェテリアで取る。
 午後にはハーヴァード・ラドクリフ・カレッジ最寄りのシェラトン・ホテルで、ボストン観光局のベス・スターリー女史とケンブリッジ観光案内所のロビン・カルバートソン女史を相手に、Oが "My Strategy to Revitalize the Greater Morioka - Washoku, Nature, and Overseas Tourists - と題し、四季に合わせた観光プランを推進することで、特に外国人観光客の心を掴み、少子高齢化が進む岩手県を活性化するという提案を行った。
 両女史ともOの発表を通じて、盛岡を中心とした岩手県の持つ観光資源とその活用法に強い興味を示し、観光客の心をもっと効果的に掴むために考えるべき点を、自らの実践例をもとに以下のように助言してくれた。
 Oのエヴィデンスにもとづく現状分析は妥当で、提案された観光プランは良い発想。次の段階では、いかにその面白さを外部に発信していくかが重要となる。情報化が進む現代においては、SNSなどのソーシャル・メディアを活用してプロモーションを進めていくことが大切であり、その際は宣伝にかかる費用を出し惜しみせず、多くの人に知ってもらうことが肝要である。具体例として、「トリップ・アドヴァイザー」というウェブサイトに、詳細かつ魅力的なボストンの観光情報を余すところなく掲載してもらうよう働きかけた事例などを話してくれた。また、政府や地方自治体の協力を積極的にあおぎ、予算や人脈の構築に役立てていく具体的な方法なども伝授。以前彼女が日本でボストン観光を推進しようとキャンペーンを実施した際は、大使館を通じて日本の旅行代理店や航空会社などの役員の方を紹介してもらい、仕事を円滑に進めた事例を紹介してくれた。既存の姉妹都市の活用や、その拡大を試みること、さんさ踊りだけでなく、豆腐を活用した祭を起こして、年中イベントを催すことなど、次々と溢れ出る二人の発想に触発され、外国人観光客で賑わう盛岡の姿が目に浮かび、わくわくする。
 その後スターリー女史から、彼女がこれまでに関わったボストンの観光戦略の詳細と、それによって培われたノウハウに関する講義を受けた。
 多様な顧客層の需要に、それぞれきめ細かく応えられるよう、プランを数多く準備しておくこと、他の機関と協力して実現に向けたハードルを着実に乗り越えていくことなど、実践的で示唆に富む内容であった。
 二人に別れを告げ、本日最後の目的地へ移動。レッドラインでチャールズMGH駅へ行き、そこから徒歩でNBAの強豪、ボストン・セルティックスの本拠地TDガーデンへと向かう。ボストン・マラソンにおける爆破テロは記憶に新しいが、ボストン市民は同じ悲劇は繰り返すまいと、入場に際して厳重なセキュリティ・チェックを実施するようになった。しかし入場を待つ列では、老若男女がチーム・カラーの緑に身を包み、一堂試合が楽しみで高揚している様子が伝わってくる。特にも子ども達のキラキラした笑顔が印象的。どこからともなく "Let's go, Celtics!" の掛け声が始まり、我々もその勢いに乗る。
 スタジアムに入場すると、そこは一大アミューズメント・パーク。露天でそれぞれピザやタコス、ハンバーガーを購入し、観客席へ。バスケット・ボールの試合はもちろんのこと、タイム・アウトやハーフ・タイムでさえ飽きる暇を与えないよう、様々な余興が催される。アメリカのサービス精神を肌で感じ、圧倒的なエンターテインメントに身を委ねた、とびっきり楽しい時間。
 帰寮は11:30。皆すぐに就寝し、夢の続きを楽しんだ。

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