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入学式

平成23年4月13日(水)

校長式辞

 本日ここにご来賓各位並びに保護者の皆様方のご臨席のもと、平成23年度岩手県立黒沢尻北高等学校入学式を挙行できますことは、この上ない喜びとするところであります。とりわけ、去る3月11日に発生しました東日本大震災に思いをいたすと深い悲しみの念を禁じえませんが、本校にあっては、例年より1週間遅れとはいえ、関係の皆様のご理解とご協力を賜り、無事この日を迎えることができましたことに対しまして心から感謝申し上げます。

  式辞の冒頭にあたり、今回の大震災により尊い命を失われた数多くの皆様に対しまして深い哀悼の意を捧げますとともに、被災者の皆様に対しましても心からお見舞い申し上げます。

  さて、ただ今、入学を許可いたしました246名の新入生の皆さん、入学おめでとう。
 また、保護者の皆様には、お子様の晴れやかな姿に、お喜びもいかばかりかと拝察し、心からお祝いを申し上げます。

  本校は、1924年(大正13年)、盛岡中学、一関中学、福岡中学、遠野中学に次ぐ県内5番目の県立中学、黒沢尻中学校として開学し、以来80有余年の歴史を誇る伝統校であります。本校の開学に際して、
「体ヲ練リ気ヲ養ヒ以テ遠大ノ心ヲ励マスヘシ」
(たいをねり きをやしない もって えんだいのこころざしをはげますべし)に始まり、
「紀ニ循ヒ律ニ依リ以テ公共ノ義ヲ立ツヘシ」
(きにしたがい りつにより もって こうきょうのぎをたつべし)
に至る5つの校訓が示されました。黒陵50年史には、「からだを鍛え、大志を抱いて、真面目に勉強し、質素誠実を旨としてみんなと仲よくし、公共のために大いに尽くせ」とその要旨が記されています。この校訓は、制定以来、本校の精神的源流として今日まで脈々と受け継がれておりますが、その校訓に込められた意味は、時空を超え、現代においてもまったく色褪せることのない真理であり、いつの時代にあっても本校に学ぶ者として常に心に留めておかなければなりません。

  近年にあっては、本校第31代校長である上原耕太郎前校長が、その校訓を踏まえて、

  1. 「遠大の志を励ますべし」
  2. 「文武両道」
  3. 「能力無限」
の3つをスローガンとして掲げ、教職員・生徒諸君が弛まぬ努力を続けた結果、以前にも増して、魅力溢れる学校となり、進学実績を始め各方面で確かな歩みを続け、現在に至っております。この3つのスローガンには、「能力無限」という自らの可能性を開花させるため、「遠大の志」、つまり「大志」を胸に抱き、「文武両道」に挑戦し、数々の困難を克服しながら自らを錬磨することにより、黒陵での高校三年間を充実したものとしてほしいという願いが込められています。新入生諸君、この3つのスローガンの下、自らの可能性に挑戦してください。もちろん黒陵での3年間の中には、学業においても部活動においても苦しく辛い日々が訪れることもあるでしょう。しかし、だからこそ挑戦する価値があるのです。どうか何事に対しても最後まで諦めることのない「燃える黒陵生」であり続けてください。 いや、皆さんは、必ずや「燃える黒陵生」であり続けなければなりません。なぜなら、近い未来、岩手の、そして日本復興の担い手となるべき若人だからです。
 大地震と大津波による未曾有の災害に襲われて1カ月が過ぎました。東日本大震災は、おそらくは世界の歴史上に永遠に名を留めることになるに違いありません。いま、私たちは、次代にこの悲劇を語り継ぐとともに、故郷岩手、母国日本を再興するという重大な使命を与えられました。殊に、本日本校に入学した皆さんは、高潔な人格と高邁な精神・優れた叡智を備えた人材として、まさにその復興の中心的役割を担ってくれる人材であると私は確信しています。

故郷(ふるさと)そして母国復興の担い手となるべき黒陵の若人たる新入生諸君に告ぐ、

  1. 黒陵の若人よ、『生命の重さをかみしめ、自他の生命を尊べ』
    「家も何もかもすべて流された。命だけが残った。でも命があれば何でもできる。」そう語る被災者の強さに心打たれます。本県だけでも22名の高校生の若き命が奪われ、いまなお行方不明の高校生は41名もいます。生きたいと思いながら生きることのできない生命があったことを忘れてはいけません。
  2. 黒陵の若人よ、『思いやりの心もて』
    津波が押し寄せる中、通りすがりの車に乗せられて命を救われた方のことばです。『名も告げずに去ったその人にお礼が言いたい。みんなに支えられて生きている。』『毎日、ボランティアやがれきの撤去作業などをしている人を見ると、人の情けを感じ、ありがたくて涙がでる。』と語る被災者も少なくありません。人はみんなに支えられて生きていることを忘れてはいけません。
  3. 黒陵の若人よ、『自分がなすべきことをなせ』
    被災した中学生が<いま一番したいことは何ですか>と問いかけられたとき、『勉強したい。勉強道具がすべて流された。』と応えています。被災当時は中学校3年生、つまり皆さんと同じ年齢の生徒の応えです。いま十分に勉強できる恵まれた環境にある皆さんは、来るべきときに備えて勉学に勤しむべきです。勉強したいのに勉強できない仲間がいることを忘れてはいけません。学校に行きたいのに学校がない仲間がいることを忘れてはいけません。

保護者の皆様、お子様をいま本校の生徒としてお引き受けいたしました。皆様のご期待に添いますよう教職員一同英知の限りを尽くし、知育・徳育・体育に努めます。ご家庭におかれましても、一層のご指導とご協力をお願いいたします。

結びに、新入生の皆さんに、時代を遡ること50年前の1961年、ジョン・F・ケネディーアメリカ合衆国第35代大統領の就任演説の一部を紹介します。

“My fellow Americans: ask not what your country can do for you-ask what you can do for your country.” “My fellow citizens of the world: ask not what Americans will do for you, but what together we can do for the freedom of man.”
「アメリカ国家が、アメリカ国民が、あなたのために何ができるかを問うのではなく、あなたがアメリカ国家のために、人類の自由のために何ができるのか問いなさい。」と国民に語りかけています。
ケネディー大統領の演説の一節を借りて、私から皆さんへメッセージを贈ります。
“My fellow friends: ask not what Iwate and Japan will do for you, but what together we can do for the future of Iwate, Japan and the world.”
「岩手そして日本があなたのために何をしてくれるのかを問うのではなく、私たちがともに岩手、日本そして世界のために何ができるのか問いなさい。」

新入生諸君、岩手、日本そして世界の未来を築くのは皆さんです。来るべき時に備えて、黒陵での高校時代に、文武両道に挑戦し、心身ともに健康な体を養い、人格を陶冶し、強く逞しく成長してくれることを期待し、式辞とします。

平成23年4月13日

岩手県立黒沢尻北高等学校長 川上圭一