この「Q&A」は、令和4年10月4日(火)に本校で行われました、岩手県主催(盛岡となん支援学校担当)の第6回サポーター養成講座に参加された方々から寄せられました質問等にお答えしたものです。ご覧ください。
・質問Q1~Q9・ヘレンケラーの植樹について
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・質問Q1~Q9・ヘレンケラーの植樹について
Q1;視力の弱さではなく、色覚異常について、普通校に通学しているのですが、その際、学校に伝えておくべきことは?
Q2;昔、アメリカで点字のボランティアをしたことがあります(一度だけですが)。自由に一般の方も参加できる感じで初めての体験でしたが楽しかったです。こちらの学校でも、そのような活動をされていますか?
Q3;外にも歴史資料室という小さな建物がありましたが、見学できるのでしょうか?
Q4;生徒の数が減っているというのは、弱視等の人たちも減っているのでしょうか?
Q5;視覚支援学校のまわりに、他の地区に比べ点字ブロックが多い気がする。昔からこの地に学校があったため、地域としてこのような発展になったのか、相当な努力で行政などに訴えこうなったのか知りたい。
Q6;見え方はその人それぞれだと思いますが、全員が点字で学習するのでしょうか。教科書もバラバラなのでしょうか。
Q7;白杖が視覚障がいがあることの目印とおっしゃっていましたが、白杖以外に何か身に付けるとしたら、ヘルプマークになるのでしょうか?
Q8;音声認識できるスマートウォッチやスマホなど、日常生活用具の補助はあるのでしょうか?
Q9;クロックポジション、とても便利かと思います。全国統一の基準などあるのでしょうか?
★本校のヘレンケラーの植樹について

・Q&A
Q1;視力の弱さではなく、色覚異常について、普通校に通学しているのですが、その際、学校に伝えておくべきことは?(病院の先生から教えてもらったアプリは学校に伝えています)
A1;何色と何色の区別がしにくいのか、明るさとか時刻とか疲労とか、どんな条件のときに区別しにくいのかなど、なるべく具体的に、なるべく細かく、伝えるといいと思います。更に、何色と何色だとわかりやすいとか、例えば次の様々な網掛けの種類(テキストでは略)のうち、(色違いの代わりに使う)「網掛け」のわかりやすいものや苦手なものの情報などがあれば、それも伝えるといいと思います。そして、何よりも、それらの情報を共有できる、また、先生と生徒との間で気軽に確認できる、そういう関係を作り、持続していくことが大切だと思います。

Q2;昔、アメリカで点字のボランティアをしたことがあります(一度だけですが)。自由に一般の方も参加できる感じで初めての体験でしたが楽しかったです。こちらの学校でも、そのような活動をされていますか?
A2;本校では行っていませんが、盛岡市の西部公民館(南青山町)で活動しているパソコン点訳サークル「ステップ」さんがあり、本校から、(点字版のない)教科書や問題集などの点訳をお願いしています。「点訳」は、結構大変な作業で、時間がかかり、教員だけでは絶対的に手が足りません。ステップさんには、本当にお世話になっています。

Q3;外にも歴史資料室という小さな建物がありましたが、見学できるのでしょうか?
A3;すみません。「資料館」という看板は残していますが、中にあった資料のほとんどは本校3階の「歴史資料展示室」に移してあります。あの建物は、現在物置として使われています。

Q4;生徒の数が減っているというのは、弱視等の人たちも減っているのでしょうか?
A4;国全体としての少子化傾向に加え、医学の進歩により、視覚障がい児の発生率は低下しています。本校の幼児児童生徒数が減っている一方で、地域の小中学校の弱視学級がやや増加傾向にあるのは、障がいのある子もない子も全ての子が同じ場で教育を受けるという理念の「インクルーシブ教育」の広がりのためと思われます。障がいの程度や特性、県内に一校しかない本校と居住地との距離など様々な条件にもよりますが、近年、本人や保護者が地域で学ぶことを選択する傾向にあります。本校では、そういう、地域で学ぶ視覚障がいのある幼児児童生徒や保護者、先生方、関係の方々に、連携しながら広く支援を行っています。

Q5;視覚支援学校のまわりに、他の地区に比べ点字ブロックが多い気がする。昔からこの地に学校があったため、地域としてこのような発展になったのか、相当な努力で行政などに訴えこうなったのか知りたい。
A5;本校は、明治44年(1911年)に盛岡市中央通3丁目に創立し、昭和10年(1935年)に盛岡市北山1丁目に移り、現在に至っています。確かに学校の周辺には点字ブロックが多いように思いますが、相当の努力の跡としては伝わっていないようです。ただ、ありがたいことに、(相当な努力ではなく普通に)お願いすると、音声信号の敷設や点字ブロックの修理等をしてもらっています。でも、点字ブロックはまだまだ十分ではありません。劣化して剥がれたり、雑草が生い茂って隠したり、車輌が駐まっていたりするという問題があります。本校では、年に1回「点字ブロック理解推進キャンペーン」を行い、盛岡駅等で、呼びかけのチラシを封入したポケットティッシュを配るなど、様々な活動をしています。
図5-1;「点字ブロック理解推進キャンペーン」ポケットティッシュに封入したチラシ(小学部児童作成)
図5-2;「点字ブロック理解推進キャンペーン」ポスター(高等部生徒作成)

Q6;見え方はその人それぞれだと思いますが、全員が点字で学習するのでしょうか。教科書もバラバラなのでしょうか。
A6;今年度(令和4年度)、本校の幼児児童生徒は合計26名で、「盲」10名「弱視」16名です。原則的に、「盲」は点字、「弱視」は墨字(点字に対して普通の文字のことです)を使います。一人一人見やすい文字の大きさ(ポイント)が違うのですが、拡大教科書の場合、何種類かポイント数の異なる教科書から選ぶことができます。拡大教科書以外の参考資料などでは、拡大コピーをしたり、パソコンで大きな文字に打ち直したりします。読むときに、ルーペを使ったり、拡大読書器を使ったりすることもあります。また、読み上げソフトを使うなどして、文字ではなく音声で学習することもあります。点字の教科書や拡大教科書は、元は墨字の1冊の教科書が、分厚い数冊の教科書になります。
(ポイントの違い←この文字は、MSゴシック、12ポイント)
拡大教科書(18ポイントの文字)
拡大教科書(22ポイントの文字)
拡大教科書(26ポイントの文字)
拡大教科書(30ポイントの文字)

Q7;白杖が視覚障がいがあることの目印とおっしゃっていましたが、白杖以外に何か身に付けるとしたら、ヘルプマークになるのでしょうか?
A7;白杖が、視覚障がい者であることを表すもっともわかりやすいシンボルで、今のところ、他にはないようです。次のようなマークもありますが、やはり、白杖がメインになっています。なお、決まり事ではありませんが、視覚障がい者には、まぶしさを軽減するためだったり、見た目を考えたりして、サングラスをかけている人も多いです。弱視で白杖を携帯するのを嫌がる、面倒に思う生徒もいますが、昨年、テレビドラマ「ヤンキー君と白杖ガール」が放映されたことから、白杖を携帯する生徒が増えました。ヘルプマークは、東京都福祉保健局により2012年から使われ始めたピクトグラムです。義足や人工関節を使用している患者、内部障害や難病の患者、または妊娠初期の女性など、援助や配慮を必要としていることが外見では分からない人々が、周りに配慮を必要なことを知らせることで援助を得やすくなるよう作成されたそうです。当初は東京都独自の取り組みとして始められましたが、都内の民間事業者や、全国の自治体にも拡がっています。ただ、まだ歴史が浅く、全国的な認知にはまだ至っていないかと思われます。
図7-1;盲人のための国際シンボルマーク
図7-2;「白杖SOSシグナル」普及啓発シンボルマーク(社会福祉法人日本盲人会連合推奨マーク)
図7-3;ヘルプマーク(縦長の角の丸い赤い長方形の、上に十字、下にハート)

Q8;音声認識できるスマートウォッチやスマホなど、日常生活用具の補助はあるのでしょうか?
A8-1;厚生労働省の管轄で「補装具費支給制度」や「日常生活用具給付等事業」などがあります。実施主体は市町村です。次は、「補装具」について、盛岡市のホームページからの引用です。
表8-1;表「補装具の種類」 「障がい種別」→「補装具の種類」 「視覚」→「眼鏡(矯正眼鏡・遮光眼鏡・コンタクトレンズ・弱視眼鏡)、義眼、視覚障害安全つえ」
A8-2;次は、「日常生活用具」について、厚生労働省のホームページからの引用です。
表8-2;4.種目 (1)介護・訓練支援用具 (2)自立生活支援用具 (3)在宅療養等支援用具 (4)情報・意思疎通支援用具 (5)排泄管理支援用具 (6)居宅生活動作補助用具(集宅改修費)
A8-3;次は、「日常生活用具の給付」について、盛岡市のホームページからの引用です。
表8-3;「日常生活用具の給付」在宅の重度身体障がい者等の日常生活をより快適にするため、日常生活用具を給付します。利用者は、原則として基準額の1割を負担します。ただし、負担が高額にならないよう、所得状況に応じて負担額の上限が設定されます。所得状況、手帳の等級、障がい状況、これまでの給付履歴等により個別に給付の可否を判断しますので、購入前に事前にお問い合わせの上、申請してください。
A8-4;「原則として基準額の1割負担」ですが、「負担額の上限が設定」されています。次は、「日常生活用具」の「情報・意思疎通支援用具」について、盛岡市のホームページからの引用した表です。
表8-4;「種目」→「対象者の目安」 「点字ディスプレイ」→「視覚障害2級以上」 「点字器」→「視覚障害2級以上」 「点字タイプライター」→「視覚障害2級以上」 「視覚障害者用ポータブルレコーダー」→「視覚障害2級以上」 「視覚障害者用活字文書読上げ装置」→「視覚障害2級以上」 「視覚障害者用拡大読書器」→「視覚障害者で、この装置により文字等を読むことが可能となる者」 「盲人用時計」→「視覚障害2級以上」 「点字図書」→「視覚障害」
A8-5;質問のスマートウォッチやスマホは、「日常生活用具」の「情報・意思疎通支援用具」にあてはまりそうですが、今のところ、盛岡市では、補助の対象にはなっていません。一つ一つの具体的なものについては、上にあるように、「所得状況、手帳の等級、障がい状況、これまでの給付履歴等により個別に給付の可否を判断しますので、購入前に事前にお問い合わせの上、申請してください。」となります。先に「実施主体は市町村」とありましたが、何を給付対象として何を給付対象としないかなど、細かいところは市町村に委ねられています。例えば、「暗所視支援眼鏡」は、全国で90市町村が日常生活用具として認定しているそうですが、東北では4市町村に留まっているとのことです。(2022年9月)
 
Q9;クロックポジション、とても便利かと思います。全国統一の基準などあるのでしょうか?(例えば、食事など)
A9;クロックポジションは、アナログの時計の文字盤を思い浮かべるだけですので、特に全国統一の基準などはないようです。とても便利な方法ですが、中には、「クロックポジションはややこしくてわからない!」という人もいます。そんなときには、「左(手)前にごはん」、「右(手)前にみそ汁」、「左(手)奥に煮物」、「右(手)奥に卵焼き」などと、言葉をかえてみましょう。相手にわかりやすく伝えることが大切です。相手に応じて工夫しましょう。
図9;クロックポジションの食卓の例の図(真ん中にハンバーグ、1時の方向に卵焼き、4時の方向にみそ汁、7時の方向にごはん、11時の方向に煮物)

最後に、質問ではないのですが、本校のヘレンケラーの植樹について、アンケートに次のような記述がありましたので、それについて少し申し添えます。
(Q10);ヘレンケラーの植樹は、近くに住んでいますが知りませんでした。ぜひ目に付くようにしてほしいと思います。来年は全国植樹祭もあるので、とても良い機会だと思いました。
(A10-1);2015年に案内板を設置したのですが、金網フェンスの向こう側にあり、見にくかったものを、令和4年10月に金網フェンスを移動し、直接近寄って見えるようにしました。近くにお越しの際は、どうぞご覧ください。
写真10-1;「ヘレンケラー女史植樹跡」の表示と案内板
写真10-2;「ヘレンケラー女史植樹跡」の表示と案内板、それにドイツトウヒ
(A10-2);(案内板の内容)
1937年(昭和12年)6月29日、ヘレンケラー女史が岩手県立盲聾学校(現在岩手県立盛岡視覚支援学校)を訪問し、ドイツトウヒの木を植樹しています。また、ヘレンケラー女史は140余名の生徒を前に次のような挨拶のことばを残しています。
「目は見えなくても、耳は聞こえなくても、心の目があいて居り、心の耳が聞こえるならば不自由なことはない。私の先生が私に明るい人生をつくってくれたように、あなた方の先生もあなた方を幸せにしてくれるでしょう。私達は決心さへつけば、やれぬことはない。頑張ってやらなければ不可ません。然し一人では不可ない。互ひに共力して手を握りあって幸福になりなさい。」1947年6月30日付、新聞記事より
このドイツトウヒは、1987年に強風のため倒れましたが、意志を継ぐために、二代目のドイツトウヒが同じ場所に植えられ、現在大きく育っています。
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