〜いつもお世話になっている千厩小学校からの声をお伝えします〜
第1回 |
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千厩小学校前校長 菊池信一先生 |
1 はじめに 今日も校舎いっぱいに本校と分教室の子どもたちの明るく元気な声が響いている。本校には、この四月(平成19年)から一関養護学校の分教室が、開室された。
小学校の中に、分教室を設けるという県としてもまったく初めてのことで、マニュアルがない中でのスタートであり、本校に課せられた任務・使命は、大きいと自覚しながら臨んで来た。
同じ屋根の下で生活する子どもたち、そして職員。
「とにかくやってみよう。やりながら考えよう」の気持ちを双方の職員で確認し合いながらの始まりであった。
2 分教室開室までの経緯 平成18年の11月頃、市の教育委員会から、空いている教室を見せて欲しいというお話をいただき、その後、県の教育委員会、一関養護学校、前沢養護学校と一緒に何度か会議を開いて進められた。分教室をどの教室にするかについても施設・設備・予算面等の関係で難産したが、まさに一気呵成の展開であった。
私も養護学校との関わりはまったく初めてであり、分教室のあるべき方向性に悩んだ。
そこに養護学校の先生方が、平成18年度から小学校の中に分教室が設置されている先進地長野県に視察に行くということで、私も一緒に参加させていただいた。この視察は、今後の方向性を示唆する上でとても有意義なものとなった。3月に入って改築の突貫工事が始まり、4月12日の開室式を迎えた。開室式は全校児童が参加する中で行われ、同じ屋根の下で生活する児童・職員の初顔合わせになった。
本校の6年生は、42年の歴史と伝統を誇る鬼剣舞を歓迎の気持ちを込めながら披露した。
このようにして、いよいよ分教室としての歩みが始まった。3 本校と分教室の概要 ○学校の規模は次の通りである。
・全校児童 426名
・普通学級 14学級 ・特別支援学級 2学級(知的1、情緒1) ・ことばの教室 2教室
・職員数34名
○一関養護学校千厩分教室の概要
・児童数5名(1年3名、3年1名、5年1名) ・学級数2学級 ・職員数3名
4 具体的に取り組んできたこと 双方の連絡会を定期的に開くことを確認し合って進めてきている。
・毎月教務主任と分教室の主任との打ち合わせを行い、二ヶ月に1回は管理職も加わり、一緒に協議・確認・情報交換等を行っている。
ここで、これまでに一緒に取り組んできたことについて月を追って紹介する。
5月 避難訓練 運動会 各学年の種目に参加 6月 高田松原での
キャンプ千厩小5年の行事に、分教室5年の児童も日程を工夫しながら参加 7月 本校PTA主催の講演会 一関養護学校の校長先生から「千厩の地で学び、千厩の地で育つ」というテーマで講演をしていただいた。 保護者からの感想
※今年開室になった分教室の位置づけが、思っていた以上に大切な意味があることが分かり、良かった。
※千厩小と分教室が、これからも自然に育んでいければ、日本一の学校になると思います。
※障害のある人を私たちが、まだ偏見の目で見るということがあるように思う。
子どもはすぐ仲良くなるのに、まず大人が、親が、変わらなければ。今日を機会に千厩をノーマライゼーションの精神の地に、と思いました。千厩分教室の
愛称名を公募一関養護学校と千厩小学校の児童・職員・保護者に呼びかけ、100点を越す愛称名の応募があった。
多かったのは、「ひまわり」「ほほえみ」「にこにこ」「スマイル」「うまっこ」である。
夏休み中に両校で話し合い、千厩小3年の児童が考えてくれた「ハピきら学級」に決定。
夏休み明けからその学級名で呼ばれ、親しまれている。1学期終業式での発表 1学期頑張ったこと、夏休みにしたいことを千厩小の児童と一緒に、分教室3年の児童が発表した。発表後は大きな拍手が起こった。 10月 学習発表会 分教室全員で発表し、演技に合わせての手拍子をいただく。
作品も一緒に展示
このほか、千厩小あおぞら学級との交流学習、体験学習も行い、職員間では歓迎会、各種行事の慰労会、職員旅行も一緒に実施した。
5 歩みを振り返ってみて 双方の連絡会を定期的に開くことを確認し合って進めてきている。
・毎月教務主任と分教室の主任との打ち合わせを行い、二ヶ月に1回は管理職も加わり、一緒に協議・確認・情報交換等を行っている。
ここで、これまでに一緒に取り組んできたことについて月を追って紹介する。
これまでの歩みから、次のようなことが感じられる。
(1)分教室との子どもたちとの学校生活が当たり前になってきており、自然な交流ができている。
(2)互いに暮らし、理解することにより思いやりの心を持つようになってきている。
(3)共に子どもたちの意識が変わってきている。
(4)分教室の子どもたちは、社会的な経験を広め、大きな成長が見られる。
(5)地域の方々に行事等でかなり理解され、分教室の存在がごく自然になってきている。
また、双方の学校の先生にとっても、次のような得る物があった。
〈小学校の先生にとって〉
・障害のある子どもの教育への理解が深まる。
・一人一人の子どもの個性などの違いを一層認識できるようになる。
・一人一人によりきめ細かい指導ができるようになる。
・一人一人の子どもの人格や人間的側面がよりよく見えるようになる。
〈養護学校の先生にとって〉
・障害のない子どもへの教育への理解が深まる。
・障害のない子どもの発達、成長の様子をより理解できる。
・教科の指導方法などについて理解が深まる。
6 おわりに このように自分の生まれ育った地域で共に学び、育つことは共生社会という理念の社会を築くことになることを、強く肌で感じた次第である。
マニュアルのない中でのスタートであったが、このような形で初年度としての分教室との方向性を模索することができたのではないかと思っている。
5月に佐賀県、11月に大分県の県教育委員会からの訪問を受けているように、今後、全国的にノーマライゼーションの理念に基づき、障害のある人もない人も地域で豊かに学べる教育環境の整備が望まれる時代になってくると思う。
平成19年12月
(イラスト:千厩小学校 三浦早貴子先生)